2015年6月28日日曜日

⑦ソーシャルスタートアップならではの難しさ3 リソースが獲得しづらい(リワードが設定しづらい)

ソーシャルスタートアップならではの難しさ3つ目は、


事業構築にむけたリソースが獲得しづらいことが
やはり、あげられると思います。

これはマーケットが成立していないともいえるわけで、
その意味でソーシャルスタートアップに対するマーケット
(リソースを効果的に提供し、拡大、再投資が行われる仕組み)
を構築すること自体、現時点で「市場の失敗」分野であると考えています。

その原因は複数ありますが、
現時点で、やはり一番大きいのは
投資家にとっての、リワード(報酬)が設定しづらいことがあげられます。

これは前項の
「インパクトが可視化しづらい」とも密接に関係します。

つまり、例えば1億円をあるソーシャルスタートアップに投資したとしても、
それに利子が付いて還ってくるわけでもありません。

だとしたら、せめて
それ以外の報酬が明確に設計されている必要があります。

それがなければ、
投資家(それが法人であれ、個人であれ)からしてみれば、
数多ある他の投資機会と比べた時に、
わざわざソーシャルスタートアップを選んで
リソースを投下する意味付けができないのです。


とはいえ、個人的には、これまでの富裕層営業の経験上
国内でも、多くの起業家や、企業経営者などの富裕層は

「社会的意義のある投資であれば、たとえ自らに対して
 短期的な金銭的リターンを生むものでなくても、投資をしたい」

と考えている方は、かなり多いと感じています。


あとは、ソーシャルスタートアップ側が、より確かなインパクトの可視化と、
リワード設定とその履行を行うことができれば、
ソーシャルな領域に対して投下される社会資本(これはお金に限らない)は、
増加すると考えています。


ここからは、かなり個人的な妄想ですが、
現在、日本の家計資産は1600兆円を越えると言われており、
そのうちの半分、800兆円を超える額が、預貯金として銀行に預けられているとされます。

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ちなみに、
ファンドレイジング協会さんによると、
(ちょっと時期ずれますが)2012年で日本の個人寄付の総額は約6900億円だそうです。

ビジネス領域のスタートアップに対しての資金提供も、
家計における株式投資、出資の割合は9.5%なので、ざっと160兆円くらい(2014)
ありながら、国内の公開前のスタートアップの資金調達額は計1154億円に留まり、
こちらも、VCさんがメインだと思うので、個人投資家の資金は限られると思います。

➔このあたり、詳しいデータお持ちの方がいればご教示下さい☆
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これだけのお金が家計部門にあっても、それが国内の新しい挑戦
にむけて積極的に投資されるという状態でないのは明らかです。


とはいえ、ここからは
SUSANOOらしく「課題」を「機会」に転換して考えてみます。笑


仮に、それぞれ日本の個人が
銀行預金の1%(100万円なら1万円、1億円なら100万円)といった形で、
積極的にソーシャルスタートアップを選択し、投資(寄付)をしていく仕組みができれば、
800兆円のうち1%、つまり8兆円規模のマーケットが構築されると考えています。

(もちろん、そんなに単純なことではないとは思いますが、)

今後、ソーシャルスタートアップという存在の位置づけが、
私達個々人の日々の生活の質を向上させたり、保つために重要な
行政、企業に並ぶ第三のプレイヤーとして、広く認められるようになれば、
こういった資金の流れは案外簡単に生まれていくのではないかと思っています。

少なくとも、税金のように、
有無をいわさず徴収されて、何にどれだけ使われて、結果どうなっているのか
よくわからないようなお金の使い方よりも、

投資対象の顔がみえて、何に、どれだけインパクトを目指して挑戦しているのか?が
見えれば、そちらの方がよほど、資金の投資先としては、魅力的になりませんかね?

これはつまり、
「自分たちが必要としている、あるいは大切だと思うことを
自らの手で選んで、育てていく」という、新たな公共との関わり方を
生み出していくことでも、あると思っています。

(うーん、わかりづらい、笑)


そうすることで、
公的なサービスを、より小さな自治体、地域社会といった単位で、個々人が
主体的に考えて、取捨選択し、投資することで、
より柔軟で、効果的な公的サービス、社基基盤の運営が
実現できるのではないかと考えています。


(↑この辺りはまだまだ伝わりづらいと思いつつ、
 とりあえず言葉にしてみました。あしからず。)



なお、個人的には
こういったソーシャルスタートアップのマーケット構築には、
クラウドファンディングの仕組みに、大きなヒントが隠されていると考えています。
これについては、また後日。


以上

2015年6月21日日曜日

⑥ソーシャルスタートアップならではの難しさ2 「インパクトが可視化しづらい」

前回に続き、ソーシャルスタートアップならではの難しさについて。
2つ目はインパクトが見えづらい、あるいは見せづらいという点です。


もともと、利益の最大化ではなく、
インパクトの最大化を優先するソーシャルスタートアップ。

彼らは、サービスや製品が提供される
顧客や、その周辺環境の変化にフォーカスを当てているため、
必ずしも自社製品の売上や、営業利益といった数値の変化だけで
自分たちの事業の成否を測ることができません。

もちろん、売上や利益も重要な指標に変わりは無いのですが、
それだけではステークホルダーからの
「それで社会がどう変わったの?」という問いに応えるのは難しいのです。

よく考えてみると、そもそも、ある製品やサービスが、
当事者あるいは、その周囲の環境にどのような変化が起こったか?
そして、それに対して自社の提供したサービスや製品はどれだけの効果を出したか?


を正確に計測するのは、かなり難しいことだと思います。

そういう意味で、ソーシャルスタートアップの
社会的インパクトを目指して行われる社会課題解決型の事業は、
新しい価値基準や、その指標を開発する取組でもあり
実は、とても新しい挑戦の領域だとも言えます。

もちろん、これは課題領域によっても事情は異なります。
教育分野などは、効果が現れるまでに時間がかかったりするけれど、
例えば明らかに衣食住が足りていない人々への、サービス提供は
その効果が比較的説明しやすいといった違いです。

が、いづれにせよ、少なくとも、
ソーシャルスタートアップの皆さんはつねに
「それによって、社会がどう変わるんですか?」
というステークホルダーからの問いにさらされ続けているのです。

これに対しての回答を見出すところから、
ソーシャルスタートアップの挑戦は始まっているのです。

以上


2015年6月15日月曜日

⑤ソーシャルスタートアップならではの難しさ1 「当事者としての視点」

前回、ソーシャルスタートアップの特徴と可能性に触れましたが
今回は一方で起こりうる、ソーシャルスタートアップならではの落とし穴というか
気を付けておきたい点についてもまとめてみます。


1、当事者の視点から抜けだすのが難しい。

「驚きました、みんな、やりたいことが明確で、課題をよく捉えている」
これは、以前SUSANOOのブートキャンプにお越しいただいたメンターからのコメントです。

社会課題解決型ビジネスに挑戦する方にも
いろんな背景の方がいると思います。

なかでも、自身の原体験が、解決しようとしている社会課題そのものと、
強く結びついている方。つまり、課題の当事者である方が、
いまなお、結構な割合をしめていると感じています。
(もちろん、そうじゃない人も大勢いますが、、)

対峙している課題の当事者であるからこそ、
課題の現場に立ち続ける覚悟をもっていらっしゃるし、
その課題の背景についても詳しいということはあります。

ですが、私個人はここに一つ
大きな落とし穴もあると思っています。

それは、当事者としての視点・感情や痛みがわかりすぎるがために、
ともすれば、課題の当事者=被害者として、描いてしまうことが多くなるということです。

仮に起こっている現象そのものを、
「問題」として扱うところからスタートしてしまうと、
どうしても、その事業が成長していくプロセスで
「社会正義」や「支援」、「義務」といった、価値観論争に巻き込まれてしまいます。

その結果、結局のところ、
事業としては、「課題意識」に共感してくれる
特定のステークホルダーからの支えに依存してしまう構造となり、
結果として、目指していたはずの、大きな展開に
つながりづらいということが起こリ易いと考えています。

もちろん、そのように考えるべきでない課題の現場もたくさんあります。
人間の身体や精神など、生命そのものの危機や、小さな子どもたちが
直面する問題などは、少なくともそれに当たると思います。

それを前提としたうえで、
SUSANOOではあえて、「課題」を「機会」として捉えるという
アプローチを重要視しています。


たとえば、

「人口が減少して空き家が増え続けている」

という社会現象に対しては、
治安の悪化や、コミュニティ崩壊などを引き起こす
「課題」としてフォーカスし、その解決方法を考えようとするアプローチができます。

一方で、
あえて「機会」として捉えることで、
むしろ増えていく空き家を有益なリソースとして捉えることができれば、
新たなビジネスモデルやコミュニティ形成の起爆剤にすることも可能です。


これは記事①で触れた

学校とそりが合わず、勉強もせず、ルールにも従わない生徒を
「課題」として捉え不良と呼ぶこともできるし、

一方で、新しい規範を創造していく
可能性を秘めた人財として捉えることもできる、ということと同じなのです。


重要なのは、
ソーシャルスタートアップが、あえて
「課題」を「機会」として捉えるアプローチをとることで、

「課題を解決する」という収束していく未来へのチャレンジではなく、
「新しい価値を生み出す」という拡大・創造していく未来へのチャレンジに
つまり、全く別の意味に反転されるということです。

そうすると、ビジネス領域からみても、
ソーシャルスタートアップが目指す「市場の失敗分野」における
課題解決型のビジネスモデルの確立が、そのまま
「新しい市場の創造」と映ることになります。

私は、これにより、
ビジネスセクターからソーシャル分野に流れるヒト・モノ・カネ・情報も
これまでのチャリティ的な文脈に限られず、むしろ
積極的な投資対象として位置づけられるのではないかと考えています。

そして、なにより、人情としても
「楽しいこと」のほうが、より長く、深く、
関わりたくなるものではないでしょうか。


このように本来どこまででも「苦しむこと」のできる課題の現場に
「楽しそうな」アプローチで挑むからこそ、
「私達も一緒にやりたい」という仲間が次々に「雪だるま式」に増えていく、
といったことが、起こり易くなると考えています。


以上